薬指の約束は社内秘で



タクシーの窓から流れ込む夜風がワインで火照った頬を冷やしてくれる。

離れていく高層マンションが見えなくなると、葛城さんの絶句した顔を思い出し、少し反省。
あの後すっかりふて腐れてしまった葛城さんをマンションに残し、3人でタクシーに乗り込んでいた。

「会社では見れない優生のこと、知りたくない?」

館山さんの耳打ちがあまりにも魅力的だったから、葛城さんを裏切っちゃったんだけど。

館山さんは葛城さんをからかい疲れたのか、タクシーに乗り込むとすぐに眠りについてしまった。

課長を真ん中にして座る後部座席で、「葛城さんのぶっちゃけ裏話を聞けなくて残念だなぁ」と思っていると、「そういえば」とのんびりした声で、とんでもない言葉を投げかけられた。

「藤川さんは、葛城君と特別な関係なんだよね?」

「はい――……えっ! えぇ!! いえ。いや、どっ、どうなんでしょう」

課長からダダ漏れる癒しオーラに流されて、うっかり肯定してしまいそうになる。
慌てて言葉を濁したら、小さく笑われた。
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