薬指の約束は社内秘で
あの日は色んなことがあって家を飛び出した私は、たった1人で山奥にある絶景スポットまで足を運んだ。
まだ一度も見たことのない流れ星にあるお願いをするために。

でも一瞬で流れてしまったまばゆい光に、願いなんてできるわけがない。
泣きじゃくっていた私に声をかけてくれたのが瑞樹だった。

『どうしたの?』

『お願い…出来なかったの。空飛ぶ車をください。いい子にしてくださいって。
――だって、私がっ、いい子じゃないから、お母さんいなくなっちゃった。いい子じゃないから…お父さんだって』

半年前に病気で亡くなったお母さんに、空飛ぶ車で会いに行きたかった。

それは当時流行っていたCMの影響があったのだと思う。
まばゆい流れ星よりも速く夜空を駆けて行く車のCMは瀬戸モーターのものだった。

嗚咽混じりの言葉に、それまで黙って聞いていた瑞樹が力強い声で約束してくれた。

「流れ星の神様の代りに、僕が叶えてあげる。だから泣かないで?」

差し出された手の温かさに止まったはずの涙がまた一筋頬を伝って、嬉しくても涙が出ることを初めて知ったんだ。
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