薬指の約束は社内秘で
あぁ。『どうせ、冗談だよね?』なんて軽く考えずに、全力で豚文字を阻止するべきだった……

ささやかな抵抗とばかりにわざとらしいため息をついてやると、行き交う人で溢れた雑踏から穏やかな声が聞こえてきた。


「この週末は、久々に楽しかった」

不意打ちの優しい響きに、私を見下ろす瞳の柔らかさに、トクンと心臓が幸せの音を響かせる。

いつも意地悪ばかりを言う唇は時々胸に染み入る言葉を伝えてくれるから。
思わず歩み止めて葛城さんを見つめ返すと、


「藤川は、そうでもない?」

斜めに覗き込まれた瞳が揺れ動いたように見えて、胸の奥がキュッと締めつけられる。
慌てて首を振りながら声を張った。

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