薬指の約束は社内秘で
夢で別れた彼氏の名前を呼ぶなんて。いや。名前だけなら、まだいい。

他にも何か恥ずかしいこと言ってたりしたら――……

私の言葉に葛城さんは何かを考えるように視線を横に流すと、もう一度足を組み返す。
彼の返事を待つ時間が永遠のように長く感じる。例えるなら、判決を待つ被告人のような気持ちだ。

そして待つこと数秒。祈るような気持ちで待つ私に非情な判決が下された。

「あぁ。瑞樹って煩いくらいに言ってた」

ポツリと漏れた名前に頬が熱くなる。そんな私を見た葛城さんは意味深な笑みを浮かべた。

「瑞樹ねぇ。社内の人間なら瀬戸 瑞樹。彼氏か?」

「ちっ――がい、ますよ」

「顔は口ほどになんとかって、典型を見た」

今日一番の底意地悪い笑顔に一瞬で血の気が引く。慌てて頬を両手で押さえるけど、もう遅い。

どうしようっ。このまま誤解されて噂にでもなったら、瑞樹にだって迷惑がかかる。

焦りまくる脳内で必死に言い訳を考えているというのに、隣の男はやれやれと肩を竦める。

「女子社員人気NO1の彼氏がいるのに、婚活かよ。高望みばかりしてると、本当に行き遅れるのにな」

呆れたように言う彼を思いっきり睨みつける。

ちなみにいま現在の人気NO1はあなたですけどね? でもそれは、悔しいから絶対に教えてやらない。
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