薬指の約束は社内秘で
「それで、なに?」

「えっ?」

「さっきなにか言いかけたろ。まさか朝食にルームサービス取りたいとか言うつもり?」

「いっ、言わないですよ。そんなことっ」

慌てて否定すると顔を斜めに覗き込まれ、もう何度目かの意地悪な瞳が私を見つめる。

優しく気遣ってくれたと思ったら、イチイチ憎まれ口叩かないと会話にならないのか、この人は?

わざと深いため息を吐き出してやる。でもせっかく振ってくれた話だ。勇気を出して聞いてみた。

「あの私。変なこと、言ってないですよね?」

「婚活頑張る宣言のことか、成果はあった?」

ニヤリと口角を引き上げる嫌みな笑みに「玉砕ですよ!」と逆ギレしてやりたいのをグッと堪える。
私が婚活バーにいたことは知らないだろうから、それはあえてスルーして本題に入った。

「そうじゃなくてっ。寝言で何か言ってませんでしたか!?」

勢いそのままに言い放ってやると、さすがの葛城さんも虚を突かれたように瞳を丸くする。

瑞樹と別れてから久々に見た夢。夢の中で何度も彼の名前を呼んでしまったことは、なんとなく自分でも気づいていた。
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