薬指の約束は社内秘で
そして定刻通り、宴は始まる。
お父さんの人望なのか、まだ19時を少し過ぎたばかりだというのに、狭い店内ではすでに入りきれないほどの人が集まってくれた。
結局、誕生日パーティーとは名ばかりで、日頃お世話になっている人達をもてなしたいだけなんだよね……
一升瓶を片手にお酒を注いで回るお父さんと反対の方向から、私もお酒を注いで回る。一通り回り終えて、料理を少しつまんでから、外の空気を吸おうと店の外に出た。
道路を挟んだ向こう側にはベンチと滑り台だけがある小さな公園がある。
そこのベンチに腰を下ろして、東京よりも明るい夜空を仰いで息を吸う。
澄みきった清涼感のある空気が体全体に染み込むと、初めて彼に触れた祭りの夜の出来事が頭を過った。
静寂さえ心地良く感じたあのときにはもう、彼に惹かれていたのだと思う。
でもいまは、からかうように笑った横顔も、髪を優しく梳いてくれた指先も、何も感じることができない。
葛城さんがいない――。
何気なく暮らしている毎日の中で、彼一人いなくなるだけで堪らない気持ちで胸が締めつけられる。