薬指の約束は社内秘で
二人のことをちゃんと祝福できるように、早く忘れなきゃいけない。そんなことはわかってる。

でも心に何度言い聞かせても時間が経てば経つほど、その想いは意に反して深まってしまう。

静寂を際立たせるような強い横風が頬に触れて、身に染みる心細さに膝に置いた両手をギュッと握りしめた。


「でも、早く……忘れなきゃね」

まぶたの裏を熱くするものを堪えるように視線を上げると、暗闇を照らしながら近付いて来る一筋の灯りに気づいた。

砂地に音を立てながらゆっくり近づいてくるその人物が視界に映り、心臓がトクンと大きく脈を打つ。


「どうしたの?」

温かみのある瞳が、やさしく気遣う声が、いま一番聞きたかった声とリンクする。
< 313 / 432 >

この作品をシェア

pagetop