薬指の約束は社内秘で
いつまでもこんなんじゃ、ダメだよね。

まぶたを熱くさせるものに言い聞かせながら息をつく。
一呼吸置いてから、口角を引き上げた笑顔を隣の彼に向けた。


「違うの。葛城さんには、フラれちゃったんだ」

言葉にするとやっぱり辛い。

誤魔化すように乾いた声で笑うと、瑞樹が息を呑んだのが分かった。
重苦しい沈黙が流れて、「嘘だ。そんなわけっ」と小さな呟きが聞こえた。

「嘘だったら、よかったんだけどね。本当なんだなぁ、これが」

わざとおどけるように言ったら、「無理するなよ」と静かに返されてしまう。

すべてを見透かす言葉に胸がキリキリと軋み出す。
じんわり侵食していく痛みを堪えるように空を仰ぐと、明るい夜空を白い光が流れるのが見えた。


願いが叶うという眩い光は、いつだって一瞬で願う時間すら与えない。
欲深い人間の願いに神様が困ってしまうからかもしれない。

ふと瑞樹が何かを呟いた気がして、「え?」と聞き返す。
夜空を仰いだまま彼は言った。
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