薬指の約束は社内秘で
顔が見ていられなくて瞳を伏せながら答える。
一瞬の沈黙の後、深いため息をつかれた。

「それは、お前の為に集まって下さったお客様を置いてでも、行かなきゃならない用事なのか?」

小さく頷く。

「俺を納得させてぇーなら、ちゃんと目ぇ見て言ってみろ!」


その言葉にハッとする。それは、幼い頃から言われていること。
大事なことは、ちゃんと相手の目を見て伝えること。


「ごめんなさい。どうしても、いま会いたい人がいるのっ」

今度は目を逸らさずに言うと掴まれた腕が解かれ、お父さんは満面の笑み浮かべた。

「それでこそ俺の娘だ! よし、走って行って来い!!」

前のめりになる程の強い力で背中が押され、自然と前に動いた足は勢いそのままに走り出す。
公園を出る直前一度振り返ると、お父さんは大きく手を振っていた。
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