薬指の約束は社内秘で
さっきまでいたカップルは、私が暗い顔でため息をつきまくっていたら、怖いものを見るような目をして帰ってしまったし。


「もう、本当に帰っちゃうからね!」

逆切れしたって、答えは同じだ。


さすがに諦めて肩落として帰ることにする。

少しぬかるんだ林道をとぼとぼと歩いていると、ここまで無理してきたサンダルも限界だったようで。
展望台の駐車場に辿り着くのと同時に、右足の靴底に付いているゴムが取れてしまった。


「はぁぁ。気に入ってたのに。体も心もサンダルまでボロボロだって」

崩れ落ちるように地面にぺたりと膝をついた、そのとき。

暗闇に光る一点が私に近づく。

考えるよりも先に、ドクンッと心臓が何かを感じ取りあり得ない速さで脈を打つ。
その場に立ち竦む私のそばに一台の車が止まる。


ゆっくりと開かれるドア。姿を見せたのは、葛城さんだった。
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