薬指の約束は社内秘で
「えっ? なにか——」


聞き返そうとしたら繋がれている腕ごと引かれて一瞬で温かい腕に抱きしめられていた。
背中に回った腕に力が加わり、息苦しいほど胸が締めつけられる。

「葛城さんっ」

戸惑いの声を漏らすと、首筋に顔を埋めた彼が囁いた。

「このままで――……」

嬉しいのに苦しい。諦めることがこんなに苦しいなんて、知らなかった。
佐々木先輩を諦めた時の愛美もきっと……


彼女に悪いと思いながらも温かい胸板から感じる温もりにそっと体を預ける。

鬱蒼とした木々が強い山風を受けてざわざわと騒ぎ出し、木の枝が揺れるざわめきに紛れて、静かな声が鼓膜まで届いた。

「誕生日おめでとう」

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