薬指の約束は社内秘で
1ヵ月も待ってられないっ。

迷惑とは思ったけれど昼休みに経営統括室に立ち寄ると、葛城さんは外出先からそのまま空港へ向かうと、経営統括室の男性社員が面倒くさそうな顔で教えてくれた。

タイミングが何かと悪いなぁ。

でも恋の神様を恨もうとは思わない。

運やタイミングなんてものは、ほんの些細な問題だと、私がいま一番会いたい人が教えてくれたから。


それから気合を入れて仕事を処理し、定時ダッシュで会社を後にする。

1階ロビーから外に出る。

横から吹きつける強いビル風に足を取られそうになりながら、歩いて10分ほどの東京駅になんとか辿り着いた。

ちょうど出るところだった成田行きの特急に飛び乗ると、大きなキャリーバッグを片手に持つ瑞樹とばったり出会った。


「もしかして、見送りに来てくれた?」

首を傾げられて、「えっと」と言葉に詰まる。

そうか。瑞樹もドイツ支社で働くって言ってたもんね。

そんなことを思いながら背の高い彼をチラリと見上げると、柔らかい笑みを返された。
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