薬指の約束は社内秘で


結局、東京駅まで戻ることになった。

駅で仙道さんと別れてから、葛城さんとタクシーに乗って彼のマンションに辿り着く。

タクシーを降りてマンションのエントランスへ移動するときに、突風で傘が飛ばされそうになって服が濡れてしまい、

「けっこう濡れたな。これ、藤川の服だから」

バスタオルと置いたままになっていた薄いグレーのマキシワンピースを受け取ったところで、クシュンッとくしゃみが口から飛び出る。

葛城さんが心配げに瞳を細めた。

「早く着替えた方がいいな。風呂——は、時間かかるから、熱いシャワーでも浴びるか?」

「あっ、えっと」

そこに深い意味はないのにシャワーと聞いてドキッとしてしまう。

心配して言ってくれてるのに、変に意識して失礼だよね。

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