薬指の約束は社内秘で
「——ったく、危なっかしいったらないな」

一瞬で近づく距離に、それだけで鼓動が速まってしまうのに。

シャワーに打たれてびしょ濡れになったシャツが、葛城さんのスラリと引き締まった身体を透かしていて頬が熱くなる。

慌てて逸らした視線を自分の胸元に落とすと、薄手のカットソーが濡れた体に張りついて、体のラインがはっきり見えてしまっていることに気づいた。

「すみませんっ。余計濡れちゃいましたね」

「あぁ」

伏し目がちに見下ろされてなんだか恥ずかしい。
胸元を腕で隠そうとしたら私の両肩を支える彼の手に力が加わる。

「藤川」

熱気のこもる浴室に響く低い声に、煩い鼓動の響きに、思わずギュッと瞳を閉じると、

「そのままシャワーにしろよ。ちょっと出が悪いけど、体冷やすよりはいいだろ」

私を見下ろす瞳が柔らかく細まり、肩を離れた彼の右手がポンッと頭に落ちてくる。

背を向けて浴室を出て行こうとした背中を見つめていたらドクンッと胸が震えて、後ろから抱きつくように体を預けた。
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