薬指の約束は社内秘で
いつかしてくれたみたいなお姫様抱っこは、葛城さんがするとすごく自然で様になっていて、ドキドキしてしまう。


バスローブから葛城さんの香りがする。

顔をそっと胸板に預けるだけで、胸がキュッと締め付けられる。

胸板から伝わる微かな鼓動が、肌で感じるぬくもりすべてが、心の奥底で抱えていた不安を拭い去っていき、止められない感情が目頭を熱くしていく。

音もなく頬を伝った涙に彼の指先がそっと触れた。


「どうした?」

心配げに覗き込む瞳に教えてあげたい。

嬉しくても涙は出るんだってことを。葛城さんと出会って初めてそれを知ったんだと。

何をどう言葉にすれば伝わるんだろう――。


まだ葛城さんさへの想いに気付かなかったあの頃。

常に自信に充ち溢れたその顔を見る度、自分に足りないものが見つかって悲しくなった。

でもいつしか隣にいるのが相応しい人間になれるよう、努力していきたいって思えるようになったことを。
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