薬指の約束は社内秘で
「メールのこと悪かった……」

首筋に埋もれた声が掠れた声を漏らすと、少し前のつまらない意地が一瞬で消え失せてしまう。

「私も、約束破ってごめんなさい」

お腹に回った腕にそっと手を添えながら返すと、首筋から顔をあげた彼からの優しい響きが耳朶に触れた。

「それはいい。最近会える時間が少ないし。寂しかったんだろ?」

私の思考を完全に見透かした答えが鼓膜へ流れ込むと、それだけで寂しかった心が埋まって温かい気持ちになれる。
でも、好きっていう気持ちが積もれば積もるほど、心はもっと欲張りになってしまうから。


もっと会いたい、そばにいたいだなんて。素直に伝えても困らすだけ。

言葉にしてはいけない想いは胸にしまい、彼の手を解いて背中を振り返った。
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