薬指の約束は社内秘で
「そんなことないよ。大丈夫」

最近自分でも上手くなったと思う作り笑顔を浮かべたら、高い所にある瞳に影が差す。
優生の両手が私の腰を引き寄せて僅かに開いていた距離が縮まると、どこか鋭さのある瞳で顔を覗き込まれた。


「そんな顔、まったく説得力ないな。また約束破るつもりか?」

「だからっ、そんなことない。そんなわがまま……思ってないよ」


逸らすことを許さない真剣な瞳にドクンと心臓が大きく脈を打ち、消え入るような声を漏らした唇にそっと指を添えられた。


「素直な気持ちを伝えるのが、なんでわがままになる? そんなのも受け止められないほど、俺が器の小さい男に見えるか?」

じんわりと胸に染みる優しい声を漏らした唇がそっと頬に触れて、指を添えたばかりの唇に柔らかいキスを落とす。

彼の気持ちが泣きたくなるほど嬉しいけど。
やっぱり素直な想いを吐き出すのはダメだと思ったから、

「本当に大丈っ――」

続きの言葉は強引に唇を奪われて声にもならなかった。
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