薬指の約束は社内秘で
思わず言葉を詰まらせるとふっと余裕げに息をついた彼は、顔を逸らそうとした私の顎をクイッと自分の方へ向かせる。顔を寄せてきた優生の前髪が頬を掠めて、


「俺には――もっとしてって、聞こえるけど」


掠れた声を漏らした唇と私のそれが軽く触れ合う。
不意打ちのそれに目を閉じるのを忘れてしばし見つめ合うと、優生は満足げに瞳を細めながら下唇を甘く噛んできた。

それだけで体の芯がきゅっと疼くようになって気持ちが高まってしまう。

――って! 完全に流されちゃダメだってば、私!!


「だから、こんなドアの近くでなんて、外に聞こえたら恥ずかしいよっ」

長い触れ合いに乱れたワンピースの肩紐を直しながら訴えると、「大声はお父さん譲りか。いまの大声の方がよっぽど恥ずかしいんだけど」としれっと返されてしまう。


付き合っていることを報告したいと言ってくれた優生を連れて、一度実家に行ったことがある。だから、そのときのことを言ってるんだろうけど……。
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