薬指の約束は社内秘で
遠い日の記憶に想いを馳せていたのは、ほんの数秒。ゆっくり瞳を開くと、背中の汗が引いていくのを感じた。

田村君を見返してやりたい。
そんな気持ちで必死な姿をみせたところで、彼の根底にあるものは変わらないだろう。

でも、それでもいい。変わりたい、そう強く思う。誰に何をみせつけるわけではなくて、私自身の為に。
そう心に決めたら、いつしか強張っていた頬が自然な笑顔になっているのに気付く。

USBがない? それがなんだっていうの? 

スライドなんて使わなくても、それをカバーできるほどの知識を頭に入れてきたはずだ。ないならないでやり方はある。

予定していたスライドの時間はもうすぐだった。
『でも大丈夫』心で呟き、俯き加減の顎を引き上げた。
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