薬指の約束は社内秘で
信じられない。だけど、さっきの田村君の態度がその答えなんだとしたら。

「そんなっ、そこまでするなんて――」

自分でも情けないほどの掠れた声が唇から漏れる。怒りと信じられない想いで指先が震え始める。
それ以上声にもならない私に、葛城さんは淡々と返した。

「別に、あんなの珍しくもない」

「そうでしょうか?」

「日常的によくあることだ」

ふっと余裕げな笑みまで浮かべた彼に、「葛城さんの日常って一体」と視線を引き上げる。
高い所にある彼の瞳が私を見下ろし、一呼吸置いてから彼は言った。

「前にも言ったろ。もっと他人を疑えって。
誰かの足を引っ張ってでも自分の評価をあげたいって思ったり、地位を築きたいって思う奴だっている。心底くだらないって思うけどな」

「そうでしたね。すみません」

「俺に謝る必要ないけど。自分のせいだって決めつけて落ち込んだり、他人を信じきって傷ついたり。馬鹿みたいだろ。それほど無駄な時間なんてないから」

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