薬指の約束は社内秘で
葛城さんってば! 私には賞味期限ギリギリの見た目とか言っておいて、自分はとうの昔に期限切れだったりするの!?(同じ20代だと思ってたのに!)

この和室に入る前に『絶対に負けられない女のジャンケン大会』で、(私は不参加)
見事勝利した女の子二人に挟まれ、お得意の地蔵化した彼を遠くから睨みつける。

皺ひとつない切れ長の目尻と首筋。ビールが注がれたグラスを傾ける長い指先。
若く見えるその見た目はすべて、まさかの作り物!?

葛城さんが経営統括室で得たお高い給料すべてをダンディエステに使う姿を想像してみた。


残念だけど、ない。ない、ない、ない。(見た目通りに20代でしょうよ)
そんな底意地の悪い妄想を終えたところで、謎は彼本人の口から解明された。

「松田課長には世話になってるから」

彼の右隣を陣取った子に聞かれ彼がそう答えると、その場が一瞬シンッとなる。『他の人は無駄口叩くな』オーラが女子全員から出ているからだ。

みんなの視線が松田課長へ注がれる。松田課長はほんのり染まった頬を緩めながら、嬉しそうに語った。

「いやいや。そんなことないんだけどね」

大袈裟に手を振る姿に葛城さんが瞳を細める。
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