薬指の約束は社内秘で
多分、気のせいだったんだ。
葛城さんに強く握られたと感じた手は、あれからすぐに離れてしまった。
旅館までの帰り道。彼は疲れているのか、いつもより口数が少なかった。
でも私も無理に会話を弾ませようとはせず、歩いて10分ほどの旅館の玄関に辿り着く。
葛城さんが私よりも先に靴を脱ぐと、「あーっ!」と不満げな悲鳴があがった。
「ちょっと、葛城さん。どこ行ってたのぉー!?」
「そうだよー。みんなで探してたのにぃ」
通りかかった女子数名から非難の声。
しかもみんなお酒が回っているようで、いまは経営統括室の肩書も関係ないみたい。
「もしかして、愛さんと?」
「えぇー、そういうことぉ!?」
「どうなってるの、愛ちゃん!!」
矢継ぎ早で上がる悲鳴にどう対処すべきかと、「えっ」と声を詰まらせると鋭い声が玄関に響いた
「関係ない。偶然そこで会っただけだ」