薬指の約束は社内秘で
念仏のようなボソッとした呟きに庫内を見渡す。

変化はない。不愛想な地蔵がいるだけだ。

嫌だなぁ。空耳とか、疲れてるのかな? 2課の課長に八つ当たりされちゃったしね。
後で社食に栄養ドリンクを買いに行こうと思っていると、

「婚活に目をギラつかせる女って、ちょっとしたホラーだな」

今度は、はっきり聞こえた失礼極まりない声に、「もしかして、いまの言葉は私にですか?」

そこの不愛想な置き物に聞いてみますけど?

「もしかしなくても、そうだけど?」

切れ長の瞳が斜めに傾き、ふっと鼻で笑われた。

うわ、しゃべった! いや、そうじゃなくて。ははっ、そうきましたか。そうですか。

「そりゃーねぇ。異性に不自由しない容姿のようですし? 

婚活に頑張る女子を見て、「どこの肉食獣だよ?」と、恐怖に背筋を凍らせちゃうかもしれないですけどね。

でも見た目年齢が賞味期限ぎりぎりで、顔がホラーって! なんでそこまで言われなきゃいけないんですか!?」

完全に開き直って言い放ってやる!
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