ポジティブGIRLと愉快なBOYたち
ぱっと笑顔になった彼女がスキップするみたいに俺に近寄ってきた。





架「触ってもいいですか?」



「あぁ...、うん」





弾むような口調で、しかしその手は怖々としていて、猫にあまり接したことがないことが分かる。





そっと触れた指。フィーネの毛先が揺れるか揺れないかくらいほんの少し。


なのにすぐに手を離した彼女。





それ、触ったって言わないだろ...





「...手、かして」



架「え?」





首を傾げる彼女の手を強引に取ると、ゆっくりフィーネの体に当てた。





緊張したように強張っていた彼女の顔も、フィーネの体温に安心したのか再び笑みが戻った。





細い彼女の手。俺が握るとまだ隙間が出来ている。


元気なくせに、こういうところはやっぱり女っぽいんだ。





まるで生まれて初めて女を見るみたいに、じろじろと爪先から頭まで眺めてしまう。





それでもフィーネの心地好さに俺の視線に気づいていない様子の彼女。





架「えへへ、可愛い~」




里「可愛いって言ってるさくらちゃんが可愛い」




架「変態」




悠「...」




「?」





サッカー部のイケメンが睨み付けるように俺を見ていて、思わず眉を寄せる。





里「涼依ー」




「何」




里「お茶飲みたい」




「勝手に飲んでこい」




里「流石涼依~」





いってきまーす、と間延びした言い方でキッチンへと行った里苑。





ばたんと扉が閉まる音とほぼ同時に、残されてた彼が俺の手を掴んだ。


強く握られて、鈍く痛む。





反射的に力が抜けて、彼女から手が離れる。





数秒の間のあと、我にかえったように一歩後退りをした彼。





架「え?何?どうしたの?ハルちゃん」




悠「...っごめん、何も、」




「架月、さんは、里苑のとこ行ってて」





横目で彼女を見上げると、瞬きを繰り返した後「あい」と言って部屋を出ていった。



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