ポジティブGIRLと愉快なBOYたち
里苑は誰もが認めるような容姿で、女になれてるみたいに扱いがうまいし、なにもかも器用にこなしてしまう。


欠点を見つける方が難しいのが里苑だから。





「もし、君が気持ちを全面に出せないなら、何が出来るって訳じゃないけど少しくらい協力出来る...よ」



悠「...、好きじゃ、ないですって」





頑なに否定する彼だけど、徐々に視線が移り気になって、動揺してるともとれる。





...彼に本音を言わせてどうするんだ自分。





協力するって、何をどうするつもりなんだ?


俺が里苑の気を引き付けるなんて出来るのか?





里苑みたく器用な訳でも、彼女みたいに可愛い女友達がいる訳でもない。





同情でもしてるのか。





悠「あいつを自分のものにしようたって、...ライバルが多すぎなんです」





男のくせに華奢な指を伸ばして、鍵盤に触れた。





高くて延びのある音が、今は彼の叫びみたいに聴こえて、耳を塞ぎたくなる。





悠「...圧し殺すしかないんです」





また響く甲高い音。それに反応するフィーネの耳。





閉じていた目を開けて、彼を見上げる。


「みゃあー」と慰めてるようにか細く鳴いた。





悠「いつか、皆の想いが溢れて架月がパンクしそうになったら、それを支えて決断させる勇気を与えないといけない誰かが必要になる」




「...」




悠「絶対にそうなるとは限らないけど、そうなったとき、きっと助けになれる。...俺は、それでいい」





夏の日差しに、苦しそうに微笑んで。





それでも真っ直ぐ前を向いていた。自分じゃない他人に、理想とは違うけれど求めてもらえるような存在になろうと決心してる。





悠「...まだ出会ったばかりで、大した時間を一緒にしてないけど、俺は、...架月が好きです」





出会ったばかりの彼女のことを、そんなに先まで見据えられる彼は、一番強い。





こんなに想わせて、苦しめて、それでも清々しい顔をさせられる彼女は、どんな人なんだろう。





悠「もうこれ以上、気持ちばかりが加速しないように抑制します。架月とその誰かを繋ぐ架け橋になるのは、俺ですから」



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