レインドロップ

「蒼お前さー、ここ最近毎日佐伯さんの手作り弁当だよな」

あ、私のお弁当の話してる。

「親が旅行でいないんだよ」

蒼ちゃんの声聞くの、久しぶりだな…

「いいよなー。マジ羨ましいわ」

「でも、蒼って鬼だよな」 

鬼?

蒼ちゃんが鬼って…

どういうこと…?

「せっかく佐伯さんが作った弁当、一口も食べずに俺らに食わせるなんて」

持っていたお弁当袋がするりと私の手をすり抜けて、カチャンと音を立てて落ちた。

……え…?


蒼ちゃん…食べて……ない…?


『一口も食べずに俺らに食わせるなんて─…』

頭の中でその言葉がぐるぐる回る。


「お前ら腹減ってんだから、いいだろ」

「そりゃ俺らはうれしいけどさぁー。佐伯さんにバレたら、悲しむんじゃねーの?」

「いーんだよ。あんなやつ」


嘘……


そんなに私のこと、嫌になっちゃったんだ……

いてもたってもいられなくなって、私はその場から逃げ出した。


私、馬鹿みたい。

何にも知らないで

一人で張り切って、浮かれて…。


「……痛い」

いたい
いたい

胸が、張り裂けそうに痛い。
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