身代わり王子にご用心
「流石に、悪戯にしても度が過ぎていますね」
桂木さんは腕を組んで考え込んでしまった。難しい顔をしているから、やっぱり彼には負担が大きかったかと焦る。
「い、いえ! そんなに難しく考えないでください。単に誰かが間違えて戸締まりしただけかもしれませんし」
私がパタパタと手を振ると、眉を寄せたまま桂木さんが訊ねてきた。
「でも、貸し出し用の鍵はあなたが持っていたんですよね?」
「はあ……そ、そうですけど」
「貸し出し台帳と鍵を管理する棚を照らし合わせれば、あなたが鍵を戻してないと解る以上、予備の鍵やマスターキーを使わない限り、倉庫に鍵なんて掛けられないはずです。マスターキーは店長管理ですし、後は予備の鍵を使って意図的にあなたを倉庫に閉じ込めたとしか考えられません」
改めて桂木さんに現実を向けられると、自分に降りかかったのがどれだけ悪質なトラブルかと体が震える。
彼の言う通り、実際に私は酷い風邪をひいて仕事を休まなきゃいけなかった。高宮さんが助けしてくれなければ、きっと肺炎を起こしてたに違いない。