身代わり王子にご用心
「はい、うつむかない~」
富士美さんに顎を持ち上げられ、また俯いてたんだと気付いた。無意識にやってしまう良くないクセだな。
「どう、現実が見えたでしょう?」
「……はい」
萎れながら頷くと、フフンと富士美さんが私の肩を叩いた。
「それならば大丈夫! まずは自分を客観的に観ることからスタートするの。
そしてなりたい自分をイメージすれば、何をなすべきか見えてこない?」
なりたい自分をイメージする……か。
今までそんな機会がなかったから難しかったけど、ぼんやりとだけど想像してみる。
少しだけ綺麗になった私は……彼の隣に立って。臆さずに話せるようになりたい。
自分に自信が持てるように、自分を持って。そのためには自分を磨く必要がある……そこまではイメージできた。
たどたどしくそれを話すと、富士美さんはバカにしたりせずに静かに聞いていてくれた。
そして、彼女はこうアドバイスしてくれる。
「“変わりたい”――自分でそう思うことが大切なの。他人に強要されたって、続かないでしょう?
でも、自分で決めたなら人は続けられるものなのよ」