身代わり王子にご用心




肌のお手入れだけで一時間。次にメイクの講習だけで一時間。そして、富士美さんが再び登場。


「まあまあね」


くたくたになって燃え尽きそうな私に、彼女はそうおっしゃいました。


「メイクの仕上げはこれを着てからってお願いしてあったかのよ」


富士美さんはウフフ、と心底愉しそうな笑みを浮かべてらっしゃいますが……。


その手に再び見えたものは、メジャー等の計測器類。嫌な予感にその場から後ずさると、キラーン☆と彼女の目が輝きました。


「やっぱり中身も大切だものね。下着一式も変えちゃいましょう。もちろん、その靴もコートもバッグもね?女性は見えない場所こそ気を使わなきゃ」


ふふふふ……と富士美さんの真っ黒な笑みに逆らえるはずもなく。


あえなく捕獲された私は、再び専用のフィッティングルームへ強制連行されたのでした……。


< 116 / 390 >

この作品をシェア

pagetop