身代わり王子にご用心



打ち上げが盛り上がり周りに少し馴染んだころ、私も軽いカクテルだけいただく。前のワインより甘めでアルコールも低いから、いきなり酔っ払うこともなかった。


「や、楽しんでる?」


ビール片手に隣にやって来たのは、春日先輩と呼ばれてた男性。気遣ってくれてるのか、馴れ馴れしく真横に座ることもなかった。


「あ、はい。とても……」

「皆気さくで面白いやつばっかりだろ? 君も遠慮なくまた遊びに来てくれよ。主に野郎どもが喜ぶから」

「ふ~んだ! どうせあたしには華がないですよ」


両手で缶ビールが数本持ったお盆を持った曽我部さんがいじけ、周りからドッと笑い声が上がった。


「曽我部は男より漢(おとこ)だからな~」

「そうそう! だから何の心配もいらないんだよな」

「高宮や暁に横恋慕した女どもを傘一本で撃退したあの伝説は、今でも母校の語り草らしいぜ~」


再び高宮さんのことが話題に出た時、心臓が飛び出すかと思うほど驚いた。


「でもな~あん時高宮はマリアと付き合ってて、2人は誰もが認めるラブラブカップルだったじゃん。付け入る隙なんて最初からなかったのにな~」


……マリア?


その名前を聞いて、高鳴っていた心臓が嫌な音を立てた。



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