身代わり王子にご用心
一体ナゼにこうなったか……誰か教えてください。
「へえ、発注ってそうやるんだ。知らなかったな」
「……あのう」
「ん? どうしたの」
その、無駄にキラキラした笑顔を向けないでください。ほら、他の若い女の子達から私に向けてどえらい殺気が突き刺さってますよ。
それもそうだ。
異国の適齢期の王子様……しかも喩えでなく、正真正銘の王族の血を引く彼。それだけでも魅力的なのに、長身でスマートで銀糸のような髪にシルバーグレイの瞳。顔は無駄なほど整っているし、物腰も柔らかい。
そんな本物を肉食獣であるお嬢様方が見逃すはずはないのに。彼が選んだ……というか強引に着いて来たのは、よりによって私だったんだから。
「いえ、その……どうして私のそばにいらっしゃるのかな……と思いまして。あいにく私はこの売り場には移動したてですから、あまり詳しくないのです。より的確なご説明できる者は他にたくさんいます」
言外に離れてくれ! と言ったにも関わらず、そのキラキラ王子様はニコッと笑ってこうおっしゃいました。
「ああ、気にしないで。僕は別に本気でここの視察に来たんでないし。その辺りにある等身大のPopだとでも思って」
……いや。Popはこんな華やかなキラキラオーラなんて出せないでしょう。しかも、強面のボディーガードや侍従なんて連れて歩きませんって。
気のせいでなく、お客様からの視線すら痛いんですが。