身代わり王子にご用心





国王陛下は隣にできたものがスーパーだとおっしゃった。一体どういうことだろう?


それに、でくのぼうが頑張ってるって。


興味津々で行きたかったとしても、閉店後のミーティングでお店を出られたのが午後9時半。とても入れる時間じゃないないだろう。


(仕方ないや。明日早くあがれたら寄ってみよう)


今日は諦めてアパートに帰ろうと足を踏み出すと、後ろから呼ばれたから振り向けば、草むらにアレックスが立ってた。


『今、帰りか?』

『お疲れさま……ええ、そうだけど』


茶色いコートにジーンズなんて色気のない格好だから、どこにも寄らないなんてわかりそうなものだけど。


『じゃあさ、ちょっと飲みにいかないか? 近くにいいバーができたんだ』

『え?』


一瞬、何を言われたかと耳を疑った。


飲みに誘われた、と理解してから急に警戒心が頭をもたげる。別に好意を抱かれていると自惚れてはいないけど、カイ王子に会うまでは男性と2人きりで出かけるのは避けたい。


『みんなとどうぞ。私は疲れたから、もう帰ります』


足早にその場を去ろうとしたのに、突然アレックスに腕を掴まれた。


『ちょっとくらいいいだろ? 話したいことがあるんだ』

『私は、特にないから。離して』

『OKを出すまでは離さないさ』


アレックスはひ弱そうに見えて、やっぱり男性だった。全然力で敵わない。


無理やり抱きしめられそうになった瞬間――




アレックスが何かを叫んで、私の体がグイッと反対側に引き寄せられた。




『それは困るな。こいつはオレのモノなんだがな』


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