身代わり王子にご用心
「カイッ……!」
私の目から絶え間なく涙があふれ、思わず自分から彼の胸に飛び込んでた。ギュッとしがみつき、嗚咽を漏らしながら必死に言葉を紡ぐ。
「あ……会いたかった」
「うん……」
「ずっと……ずっと不安だったの。ヴァルヌスに来ても……全然つてがなくて、会える保証もなくて……近くにいるのに……もしかしたら一生会えないかも……って」
「……そうだな。おまえはよく頑張った。だから、オレはおまえに会いにきた」
カイ王子は私をあやすように髪をゆっくりと撫でてくれる。それだけで、酔いそうなほどの幸せを感じた。
けど……
それだけじゃ、いけない。
私は涙を拭うと、一度カイ王子の胸から離れる。そして、彼と向き合った形で立つと。まっすぐにブルーグレイの瞳を見た。
……この瞳だった。
私を虜にしたのは。
だけど……。
震える両手をギュッと胸の前で握りしめた私は、深く息を吐いてから口を開く。
「わたし……私は……あの雪の日、初めて見たあなたを“ちっちゃい王子様”って思ったんです。
最初は、印象的なその瞳が気になって……それで。あなたに興味を持ちました」
でも、と言葉を切って深呼吸。
人生で一番の勇気をかき集め、すべての想いをその言葉に乗せた。
「……でも、あなたを知る度にどんどん惹かれていきました。あなたの言葉で、私は変われた。あなたがいてくれたから……ここまでこれました」
すう、と息を吸う。
一番あなたに伝えたかった想いを、どうか受け取って欲しい。
「カイ王子……私は、あなたが……好きです」