身代わり王子にご用心





ひきつりそうな笑顔を保ったまま、女の子の隣にしゃがんで目の高さを合わせた。


「ネックレスとか欲しいの? ピアスはまだ早いから、指輪とかかな?私だとこういうのが好きだなあ。あなたはどう?」


無理に目的を聞き出すと警戒するから、まずは自分の好みを出して反応を見る。興味を示せばしめたもの。ゆっくりと緊張を解きながら、自分のことも話してく。


「私も南小学校に通ってたんだよ。裏に芝生があるでしょ。そこのどんぐりを食べちゃった同級生もいたんだよ」

「え、ホント? どんぐりって食べられるの!?」


よっしゃ! 心を開かせるの成功。やっぱり同じ環境にいた、って言うのは大きい。女の子……美咲(みさき)ちゃんも、私の話す小学校の話題に興味津々の様子だった。


「とっても昔の人はどんぐりが重要な食料だったんだよ。今でもちゃんと食べられるんだって」


趣味の読書がこんなところで役立つなんて、と少しだけよかったと思えた。

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