身代わり王子にご用心



「……っ!」


次の瞬間、目を見開いた高宮さん。


目がまん丸で、口が半開き。


一瞬だけど、その愕然とした表情が可笑しくて。私は遠慮なく笑わせていただきました。


「くくくッ……た、高宮さんってやっぱり酸っぱい物が苦手なんだ」


企みは大成功。


クリスマスイブの食事会以来一緒にご飯は食べたことがないけど、以前おにぎりで梅干しだけを残してたのを見て、ヨーグルトや柑橘類が苦手と言うのを知ったんだ。


ポケットにあって仕込んだのは、レモンキャンディ。しかもクエン酸入りで酸っぱさも十倍って謳い文句のやつだ。


そんなにすごい目で睨まれたって、怖くはありませんよ~だ!

さっきの表情を思い出しクスクス笑っていると、高宮さんが私の手首を掴んだ。


「イタズラ猫には躾が必要、かもしれないな」

「猫って……別に私は飼われてなんてないっ……」


フッ、と目の前が暗くなって。次の瞬間――ブルーグレイの光がすぐ目の前にあった。


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