身代わり王子にご用心
「えっ……」
ぼんやりとペットボトルを抱えてた私は、桂木さんの質問の意図が解らずに訊き返した。
「と、特には。どうしてそう思うんですか?」
「雅幸の態度が、おかしいから」
カタン、と桂木さんは瓶を小さなテーブルに置いた。それでもあまり揺れないほど、リムジンは安定性があって乗り心地が良いけど。どうしてか、私は居心地の悪さを感じる。
どうして、隠すの? 桂木さんの明るめのブラウンの瞳は、そう私を責めているようにも思えて。
(自意識過剰……桂木さんは友達の高宮さんを心配してるだけなのに)
私は話すべきかどうか迷った。1週間前の夜、私は高宮さんに抱えられて帰ってきたらしいけど。桂木さんは何も話を聞いてないし、敢えて高宮さんに訊こうとしてはいなかった。
やっぱり、友達としてはケガの原因や何があったか知りたいと言うのは人情ということか。