庭師とお姫様 (naturally番外編)
目の前に広がる彼の笑顔と手のひらから伝わる温もり。


彼から与えられた暖かくて心地良い感覚が、ミリザ姫の中にあっと言う間に焼き付いてしまった。



「軽々しく触れたりしてスミマセン。では、俺はこれで」



そんなミリザ姫の心中など知るよしもなく。


庭師は深々と頭を下げると、颯爽と中庭の向こうへと消えていってしまったのだった。



その場に一人残された姫は、そんな彼の姿が見えなくなるまでずっと、その背中を見つめ続けていた。


手のひらから彼の温もりが消えないで欲しいと、心密かに願いながら……。


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