庭師とお姫様 (naturally番外編)
「幼稚園に通う息子に鞄を作っていたんです」



「息子……?」



庭師の口から聞かされた息子という言葉に、ミリザ姫の胸には一気に動揺が広がった。



自分より年上に見えるとはいえ、幼稚園に通う子どもが居るには若く見える。


だから彼に妻子があるなんて……姫は夢にも思っていなかった。



「こんな大の男が裁縫なんて似合わないでしょ?」



そんな姫の動揺を知る由もなく。


庭師は広い背中を丸めながら、裁縫を続けていく。


ゆっくりゆっくり一針ずつ縫っていく様子が、縫い物には慣れていないのをよく物語っていた。


< 23 / 70 >

この作品をシェア

pagetop