透明人間
「なんでですか。誠也は、誠也はどうなるんですか」

「まあまあ、抑えて下さい。これから説明します」

 鶴見はやけに冷静な姿勢で私をなだめようとしたが、そんなことでなだめられる私ではなかった。

「誠也は、今もどこかで一人寂しい思いでいるかもしれないんですよ。そんなんで…」

「ちょっと静かにしてもらえませんか」

 鶴見は静かに言ったが、私はその言葉から大きな威圧が感じられ、肺に酸素が送られなくなった。

 威厳を背景に、鶴見は話を続ける。

「すみませんね、いきなり。実はですね、正直の話、誘拐の線、身代金目的の方はないと見ているんですよね。しかしですね、まだ仮定の段階で、はっきりとしたことが分からないんですよ。そこでですね、少しそういうことをすれば分かるんで、どうか協力をお願いしている訳です。でもですね、これが違うとなれば、少し厄介なことになります。どちらかといえば、こういっちゃ悪いですけど、誘拐の方がマシだと思えます」

 私は静かに耳を傾けていたが、途中からハッとして、胸がいっぱいになった。そしてその思いを、言葉にしてぶつけた。

「それってどういう意味です?」

 鶴見はいまだ冷静だ。

「えっと、それは…うーん、言っても大丈夫ですか」

 私はもとより決意が固まっていた。

「…はい」

「じゃあ、これから言うことに驚かないでください。冷静でお願いします。もし、身代金目的ではないと、あのぐらいの子の行動範囲を徹底的に調べて捜索しましたが、いないということは、行方不明の線は消えました。ということは、やはり誰かに連れて行かれたと考えるでしょう。そこで身代金目的が出ますが、それはすぐに分かります。そしてそれが無いと分かった時、最後の線が見えてきます。それはですね…やはり言いづらいのですが、言います。それはですね、どっかの頭のイカれた野郎か尼がどんな子供でもいいと連れて行った、線で、そういう時…遊ばれて…殺されて、放置…かもしれないです」

「あ、そんな…」
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