夢見るきみへ、愛を込めて。
『おいで。今日は1日中、ずっと一緒にいられるよ』
怖いと思った。大好きだと思った。見つめられたくないと目を逸らし、抱きしめてほしいと暗がりから出た。
『ハル』
相反する気持ちは、いっくんの腕の中に収まった途端、どうでもよくなった。
『春待月に生まれた、特別な子――…』
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瞼に覚えた柔らかな感触に、目を覚ます。
何度か瞬きを繰り返し、ぼんやりとしたまま体を起こした。リビング同様に窓の外は暗く、めずらしくバイトのない夜をソファーで寝て過ごしてしまったらしい。
「……暑、」
肌に張り付いたカットソーを掴み、胸元を仰ぐ。
懐かしい夢を見た気がする。10歳とかそのくらいの。夏、だったような。とにかく暑くて暗かったのは覚えている。
「押入れ……かな」
よく逃げ込んでいたな、そういえば。そのたびいっくんが探しに来て……。
思わず苦笑が漏れたのは、私が嫌われていることを本人の前で口にするいっくんの記憶がいくつもあるからだった。
もしかしたらその夢を見たのかもしれない。悪夢ではなくとも気分が晴れないのは、少なからず苦い思いをした時期の夢だったせいなんだろう。
それでもまだ、見ていたかったな。昔のいっくんのこと。目が覚めてもしっかりと憶えていたかった。
どうして夢って、起きた瞬間から薄れてしまうことが多いんだろう。