夢見るきみへ、愛を込めて。
「俺はこうして話せるだけで、いいんだけどな」
こぼすように応えた彼に目を遣ると、彼もまた窺うようにして私を見上げた。
「それもだめ?」
動揺が遅れてやってくる。自称とはいえストーカーなのだから、聞く耳を持たず、逆上される可能性もあると、それなりに覚悟して声をかけた。
「……だめとかじゃ、なくて」
他になんて言えばいいんだろう。どう言えば伝わるんだろう。関わりたくないって。興味がないって。迷惑だって、言ってるのに。
「あなたが、自分のこと知ってほしいって言ったから……でも、私は、あなたを知りたいって、思わなくて」
「ふふ。2回目だ」
同じことばかり言う私がおかしかったのか、彼は小さく笑った。
「そういうことなら、知ってほしいってのは撤回する。って言ったら、どうする?」
調子が狂う。撤回されたところで、関わりたくないことは変わらない。だからこそ、どんなに訴えても躱されるかもしれないと思ったら言葉に詰まった。
「優しいんだね」
立てた膝に右頬を乗せる彼の表情には、嬉しさが滲んでいた。
投げかけられた言葉も、わずかに微笑まれたことも、脳がうまく処理できない。
「関わりたくないほど迷惑なら今まで通り無視するなり、警察呼ぶなり、すればいいのにさ。わざわざ自分の気持ちを正直に話しに来てくれるなんて、優しい証拠だ」
何をどう受け止めれば、そんな結論に至るんだろう。こんな風に切り替えされるくらいなら、逆上されたほうがマシだった。
「それに、俺がずっと外にいるから、寒くないのかって心配してくれたでしょう」
「……っそんなこと、」
言い淀んでから奥歯を噛みしめる自分がいた。辛辣なことを言ったつもりが、返り討ちにあっている。
どうして、そこまで。