夢見るきみへ、愛を込めて。
「あの日も、こんな夜だった」
私が世界でいちばん逢いたい人が、交通事故に遭った日。
明確な日にちは分からなかった。雪道で、バイクのタイヤがスリップして、投げ出された先で動けなくなるってことだけ、知っていた。
「何日も雪が降って、危ないからバイクは絶対乗らないでって頼んでたの。晴れの日が続いて、雪が溶けて、昼間なら大丈夫でしょって。私、本当は嫌だったのに、出かけたがるのを止め続けられなくて」
渋々了承したんだ。いっくんも、家に縛られることを嫌っていたから。自由に、好きな時に、外へ出かけたいという気持ちを汲んであげたかった。それが大きな間違いだった。
私の夢は正確無比だけれど、いつどこで何をするか100%言い当てられるわけじゃないって、嫌になるほど理解していたのに。
「甘く見てたんだ。結局、私も」
止められるはずだと思っていたなら、その時が過ぎ去るまで止め続けるべきだった。いっくんに窮屈な思いをさせようが、冬の間は何がなんでも。
「昼間なら大丈夫かなって思ったの。その辺を走るだけなら、危なくないよねって。根拠なんてひとつもなかったのに」
山道まで走りに行くなんて知らなかった。だって夢でそこまでは分からなったから。きっと今日じゃない、って思った。
「約束の夕方になっても帰ってこなくて。電話しても繋がらなくて」
誤った判断をしてしまったんじゃないかって、もしかしたら今日だったのかもって。怖くて、怖くて。駐車場の前にしゃがみ込んで、震えながら何時間も待っていた。お父さんに帰ってこいと言われても、司さんに家の中で待とうと言われても、聞く耳を持たなかった。誰も彼もが、いっくんは帰ってくると思っていた。
『ハルが見た夢の話は、誰にも言っちゃダメだよ』
内緒にしていた。いっくんが、事故に遭うこと。
「帰ってこないって分かってたのに、信じたくなくて……朝までねばって……」
夢の通りに事故が起きてしまったんだと、悟った。