歌舞伎脚本 老いたる源氏

浮舟3最終回

役名 
   老尼
   浮舟
   若尼
   薫   
   小君

(本舞台三間の間は第七幕と同じ。老尼と浮舟が読経している。
庭に若尼。花道に馬。馬上に薫。小君馬引く)

古尼と浮舟 而告之言 汝等諦聴 如来秘密 神通之力
一切世間 天人及 阿修羅 皆謂 今釈迦牟尼仏 出釋氏宮
去伽耶城 不遠 座於道場 得阿・・・・・。

(馬入口戸に着く。馬上の薫、文を小君に手渡す。小君、中には入る。
若尼、老尼に来訪を告げます。老尼いで来たり)

小君 この文は直に手渡すようにと言われました。
(ト文をかざします。老尼、文を受け取るや小君をまじまじと見やり)

老尼 まあ、これはそっくり生き写し。はいはい、あなた様のお尋ねの方は、
 この奥におられますよ。

(ト奥に目をやる。おくから衝立の影、ちらりと浮舟が顔を出します。
扇で顔を隠し、またちらりと目をやります。小君、顔を覗こうと
左右に動きます)

小君 お姉さまでらっしゃいますか?(左右に窺い)
 お姉さまですよね?  

(浮舟、見つめる目にいっぱいの涙をたたえて首を振り)

浮舟 お人違いでございましょう。遠い昔に、

(浮舟、扇を下げて開き直り、小君、後すざり)
浮舟 そのようなことがあったような気もしますが、
   今では全く何一つ、思い出しは致しませぬ!

(小君、文をかざしたまま後すざる)
浮舟 どうかご主人様にも、そのようにお伝えを!
 このお手紙は、受け取るわけには、参りませぬ!

                        拍子   幕 
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