interesting
お疲れ様でした~。気をつけてね~。
カラオケ店の前で解散後の挨拶が飛び交う。


マンションまでの道のり、疲れたのか私の斜め後ろを無言で歩く青木。


意識しつつも私から声を掛ける事はしなかった。


マンションのエレベーター前に着く。ボタンを押そうとした時、後ろからフワッと抱きしめられた。


青木の左腕が私の視界に入る。


突然の事に戸惑い、声が出ない。青木の言葉を待つが無言のまま。


そっと腕を外そうと青木の腕に手を添える。


さっきとは違う力強さでぐっと体を引き寄せた。確かに青木が後ろにいる感覚に体が熱くなるのがわかる。




「…遠藤君の事…好きなの?」


篭った青木の声がした。


遠藤?遠藤?好き?私が?


後輩として、人しては好きだけどこの場合は恋愛の好きか嫌いか。


ほんのちょっとの沈黙。



「…ぇ」

「ごめん。俺、酔ってる」


口を開いたが青木の言葉に消されてしまった。


腕を外し私を解放する。


「俺、コンビニ寄ってくから、先帰って」


早口で言い歩いて行く青木の後ろ姿を見ていた。


青木、誤解しちゃったかな?
誤解してほしくないな。


走って行って誤解を解く勇気がその時の私にはなかった。


さっき、気付いた恋心。その先に一歩踏み出すにはまだ心がついていってない。


青木の姿が見えなくなり、エレベーターのボタンを押した。










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