LOVEPAIN④

「お前、篤がメールくれなかったら、
俺、ホテルから出てすぐにタクシーに乗って、
すれ違ってたぞ」


そう言った成瀬は息が上がっているから、

私をけっこう探してくれていたのかもしれない




「で、でも、私だって、成瀬さんに電話しました」



出てくれなかったけど、
不在着信で私の名前が残っていたはず


だから、すぐに折り返して電話をくれたら、
すれ違わなくてすむはずだけど




「ああ。
知ってるけど、家帰ってから折り返そうと思ってた」



「なんで、電話に出てくれなかったんですか?」


こちらに近付き、目の前に居る成瀬を頭から爪先迄見てしまう


スーツ姿だけど、ネクタイはしていなくて、

セットしていたはずの髪は洗ったように少し湿っていて重い


微かに香って来る、シャンプーやボディーソープの匂い



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