俺様管理人とイタズラな日々
拓海が部屋を出ていった後、ファーストキスを奪われたショックからなんとか立ち直った彩芽は、気分転換に荷物の整理をしていた。
先程部屋の中を物色すると大きなクローゼットを発見したため、まずは衣類の整理から始めることにした。
しかし、クローゼットの中に制服があることに気づいた彩芽は、それを手にすると整理そっちのけで夢中になった。
(そういえば、ここの制服可愛かったんだよねっ)
姿見の前で制服を身体にあててみる彩芽。
チェックのスカートと大きなリボンがとても可愛らしかった。
(前の学校の制服は全身紺一色で地味な感じだったから、なんだか新鮮だな)
そんな中、彩芽はブレザーの襟元にある光り輝くバッチに目がいった。
(何だろ?これ…)
そのバッチは校章ではなく、りんごと花の模様が形どられていた。
彩芽が首を傾げながらそれを眺めていると、後ろから
「…おい」
という低い声が突然聞こえた。
「…っ!?か、神崎さん!?」
その声に驚いて後ろを振り返ると、すぐそこに拓海が立っていた。
「か、勝手に入らないでくださいっ!」
「…だったら、ちゃんと戸締りしろ」
拓海から距離を取りながらそう訴える彩芽に対し、拓海はそう言ってドアの方を指差した。
拓海が指差した方を見ると、部屋のドアが開け放たれたままとなっていた。
そこで、彩芽は部屋に入る際に開いていたドアを閉めた記憶がないことに気づき、
「は、はい…」
と、拓海の言葉に対して自分のミスを認め弱々しく返した。
「…ところで、どうしてここに?」
「さっき、後でここの中案内するって言ったろ?…まさか、聞いてなかったのか?」
目を細め不機嫌そうな顔を彩芽に向ける拓海。
彩芽が頭がついていかずにポカーンとしていた際にそのような話をしていたため、彩芽にはその話を聞いた覚えがなかった。
しかし、そんな不機嫌そうな拓海に聞いてなかったと言える訳もなく、彩芽は
「もちろん、聞いてましたよっ」
と、拓海にバレないように笑顔でごまかした。
そんな彩芽を拓海はしばらく疑いの眼差しで眺めていたが、特に追及することもなくドアの方へ向かった。
そのことに安堵の息を漏らす彩芽。
「おい、早く行くぞ」
部屋の外に出てそう催促する拓海に、彩芽は返事をして後に続いた。