俺様管理人とイタズラな日々
彩芽の部屋がある2階には他にも寮生の部屋だと思われる部屋が並んでいたが、拓海は特にそこには触れずに大階段を下り始めた。
「2階は、まあ勝手に散策しろ」
(…これって、案内してることになるのかなぁ?)
拓海の適当な対応に彩芽は若干苦笑いを浮かべつつも、拓海に続いて大階段を下りていった。
1階へ下りると、まず始めに入り口横にある食堂へと案内された。
中に入ると広い空間の中に長テーブルがひとつだけ置かれていて、彩芽は映画やドラマなどで見る大富豪の食事風景を連想させた。
さらに、そのダイニングのような空間からキッチンまではひとつのドアを隔てて繋がっていた。
ガラス張りのためいつでもキッチンの中は見える状態になっていたが、専属のシェフが使用していない際には常に鍵がかかっているため出入り不可能とのことだった。
「毎朝晩決まった時間帯に必ずここで用意された食事を取ること。いらない場合は事前に俺に言え」
拓海の説明に彩芽が同意の返事をすると、次の場所へ向かうため拓海はすぐに食堂を後にした。
一方の彩芽は、拓海の後に続きながら彩芽が描いていた食堂というイメージとは程遠い空間に早速首を傾げていた。
(本当に、一体ここってどういう所なんだろう?)
自分の荷物がちゃんと届けられていたことや部屋のドアに自分の名前が書かれているプレートがあったことなどから、ここが自分の目的地であったことには間違いないと思った。
また、他の寮生の部屋だと思われる部屋もあったことから、ここが学生寮であることも間違いないと彩芽は感じていた。
しかし、次に案内されたお風呂でも、またしても彩芽がイメージしていたものとは異なる空間が広がっていた。
十分すぎる広さの空間の中央には、これまた大きな円形の浴槽があった。
さらに、浴槽の周りには彫刻や柱が建てられており、彩芽は今まで見たこともない異空間に投げ出された気分だった。
「風呂は決められた時間内だったら適当な時間に入ってもらって構わないから、他の奴らと話しながら好きな時に使え」
豪華過ぎるお風呂に呆然とする彩芽に、淡々と説明を続ける拓海。
お風呂を出た後もその衝撃はなかなか消えなかった。
(もしかして…元々はどこかのお金持ちが所有してた建物を学生寮として改装したとか?)
この学生寮の疑問に対して、彩芽は様々な思考を巡らせた。
(そもそも、私が最初に行った所も学生寮だったよね?あっちはここ程の建物じゃなかったけど…)
彩芽は女性の管理人がいた学生寮のことを思い出した。
(…てか、ここの学生寮のこと"特別寮"って言ってたけど、一体どういうことなんだろう?)
考えれば考える程疑問が積み重なっていく中、そのことに夢中になっていた彩芽は拓海が足を止めたことにも気づかず、前にいた拓海の背中にぶつかってしまった。
「…っ!」
「…ったく、ちゃんと前見て歩け」
「ご、ごめんなさいっ!」
慌てて拓海から距離を取って謝った彩芽に、拓海は目の前にあったドアを指差して
「ここが、俺の部屋」
と言った。