聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~

「〈光の道〉がどこにあるのか、手がかりはなし、か…」

分厚い本をぱたりと閉じながら、ラミアードがため息のように言った。

彼の背後はびっしりと本の並んだ本棚。それがはるか天井まで続き、円形に囲うようにこの広大な空間を埋め尽くしている。彼の目の前の大テーブルには大小様々な本が山と積み上がっている。その山をラミアードはまた一冊分、高くした。

ここはフローテュリアが誇る王宮の特別棟、大図書館。

滅亡の折大半の書物が焼け落ちたものの、復興に際し積極的に本を集め、以前の規模を取り戻している。

ラミアード、フリード、グラヴァウン、リュティア、カイ、それに十数人の兵士たちはここで手分けして、〈光の道〉について調べていた。

「〈光の道〉の存在を知られれば、必ず狙われます。守りぬくためにも、私たちがまず〈光の道〉の場所を知らなければならないのに……」

大テーブルをはさんでラミアードに向かい合うリュティアの声には焦燥がにじんでいる。

「聖乙女である女王陛下にも、わからないものなのですか?」

グラヴァウンが書物をテーブルの上に投げ出しがしがしと頭をかきながら尋ねた。

グラヴァウンがここにいるということは、戦況が落ち着いているということの証明である。

フリードが考案した新しい雁行の陣の効果は絶大で、魔月たちは一気に劣勢となった。

それに加えてグラヴァウンが敵の大将グランデルタに深手を負わせることに成功したので、魔月たちはいったん退却していったのだ。

「…申し訳ありません。聖なる力の中心が、王都のどこかにあることまではわかるのですが…」

「やはりアンジュの姫、リュリエルの記憶に賭けるしかなさそうだな」
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