聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~

フローテュリア謁見の間を、今や、誰もまともに目を開けていられないほどの強烈な光が埋め尽くしていた。

ラミアードはふたつ並んだ玉座の片方を、光の中心をなんとかして見ようと目をすがめる。

ラミアードにも兵たちにも、何が起こっているのかわからなかった。

突然、玉座に座すリュティアの体が光りはじめたのだ。

それは朝露が朝日をきらきらと照り返すような清らかな輝きであったが、常ならざることにラミアードは思わず玉座から立ち上がっていた。

「リュー、どうした!?」

その時、リュティアの体の輝きに呼応するようにまばゆい一条の光が彼女に降ってきて、それが見る間に光を増し、太い光の柱となったのだ。

光の柱の中に、かろうじて、彼女の長い髪がどこからか吹きくる風を受けてふうわりとうねるのが見える。

その髪の色が黄金に見えたとき―――

唐突に、光はぱぁんと弾けるように雲散霧消した。

光の残像の中、がっくりと、リュティアの体が力を失くし、前のめりに倒れる。

ラミアードはあわてて駆け寄り抱き起したが、彼女の意識はなかった。

―――そして。

次に目覚めたとき、彼女はすべてを理解していたのだ。

すべてを。
< 136 / 172 >

この作品をシェア

pagetop