聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
二人の、何を――?

剣戟の音がライトとリュティアを交わらせる。心までも交わらせる。

リュティアが背負うのは、光神の想い。

ライトが背負うのは、闇神の想い。

二人は戦いながら光そのもの、闇そのものへと近づいていく。

何かがおかしいと、二人は感じていた。光神の想いの中にも、闇神の想いの中にも、憎しみが感じられないのだ。

むしろ、これは――…

はっと、リュティアは息をのんだ。

ひょっとして、自分たちは大きな思い違いをしているのかもしれない。

リュティアは戦いながら世界に心澄ます。世界に満ちるものに心澄ます。

死闘を繰り広げながら、それぞれの心の中に満ちているもの。

リュティアはやっと気が付いた。

心の奥底から確かに湧き上がってくるもの―それは“愛”なのだと。

セラフィムがフューリィに、陽雨神がサーレマーに、フレイアがパールに、たくさんの人々が大切な人に抱く想い。真実を見抜く力を持ち、時に壮絶で、時にすれちがうけれど、確かに大きな力を持つ想い。

リュティアはもう、ライトに返せる恋心を持たないけれど、確かに彼に“愛”を感じているのだ。

リュティアはこの時確信した。

「ライト様、あなたは魔月じゃない…!!」

「………!?」

ライトの剣を弾き、リュティアは間合いを取った。ライトの剣の動きが止まる。

「あなたを、救いたいのです。どうすれば、救えますか!?」
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